冥土のみやげ北鎌尾根
                      2009年8月

 鎌尾根。青春時代の夢に誘うなんていい名前だろう。

 昨夏、北アルプス縦走の帰り、定年退職後の一つの夢であった日本アルプスの脊梁を歩き終え、
百名山もいいが、何となく物足りないし、次はどうしようとぼんやり考えていた。
 たまたま、乗り合わせた中房温泉からのタクシーのなかで、北鎌尾根に登ってきたという女性に
出会い、話を聞くうちに、その人柄に引かれたせいではないだろうが、ついその気になってしまった。

                              はじめに
 @ 北鎌尾根を登ってみたい人のために、イメージできるようできるだけ多くの写真を組み入れた。
 A 写真は、遠近感を一定にするため、望遠等は使わず、通常に撮影したものを使用した。
 B P8〜P15は、このHPを見やすくするための印であり、特定されたピークを示すものではない。
 C 写真は事実ですが、説明は記憶違い等があるので、山行の参考としてください。
 第1日目  上高地9:30 → 槍沢ロッジ15:00

雨のカッパ橋。今日も降り止まず。
ガイド氏と私ともう一人の前期高齢者ペアの3人で
上高地を発つ。

 第2日目 
 槍沢ロッジ6:00 → 水俣乗越8:07 → 北鎌沢出合10:05〜10:33 → 北鎌沢右俣のコル
13:32 → 天狗の腰掛の基部14:00(幕営)

水俣乗越に着く。ここを右へ下る。

水俣乗越から下ろうとする天上沢を覗く。
最初は、灌木の中の踏み跡を辿る。

途中で雪渓が出てきた。今年は雪が多いらしい。
上部は雪渓脇の土石斜面を下り、傾斜が緩くなって
からは雪渓を下る。(アイゼンは不要。)

雪渓を下りきると、独標(右端)から槍(左端)に続く
北鎌尾根が紺碧の空のもと、くっきりと現れた。
右端の稜線窪みが、目指す北鎌沢右俣のコル。

左から本流の間ノ沢が合流してから、しばらく行くと
北鎌沢出合に着く。
北鎌沢右俣がコルに向かって一直線に突き上げている。
右端がP7、北鎌沢右俣コルを挟んで、中央が天狗の
腰掛、右の木立の中に見えるのが独標。
ケルンや赤テープなど目印になるものはなく、もう1本
似たような沢が手前にあったので、ガスって稜線が
見えないときは注意がいる。

北鎌沢左俣との合流点。右の沢を一直線に登っていく。
水は、雨後のため多く、ずっと上流で汲んだ。

沢を横に塞ぐような大岩を右に巻き、北鎌沢出合から
3分の2、標高2,300mを過ぎたあたりだろうか、2度
目の「木立の丘」のようなものが見えてきたところで、
左右に2本の沢が現れた。
右の沢の方が太いように見えたが、ここは左の沢を登る。
他のHP記録を見て、イメージしていたものと違う。
毎年の気象条件により、沢筋とか草付 きの状況が変
わっているのだろうか。

間もなくゴロゴロした岩の沢筋は消え、急な草地を登る。
コルが近い。

標高2,500mくらいの北鎌沢右俣のコルからルー
トを見上げる。林内に明瞭な踏み跡が付いている。
樹林に隠れはっきりと見えないが、もう一段低い
コルが、この稜線の続きにあるようだ。
 第3日目 
 幕営地5:00 → 天狗の腰掛5:42 → 独標のコル6:18 → P11の手前で稜線に出る7:40 →
 P13 8:23 → P14の二段目を小さく巻いて稜線に出る → P14の三段目から大きく巻いて、P15
の先の稜線に出る10:20 → 北鎌平を巻いて、その先の稜線に出る10:46 → 槍ヶ岳山頂12:00 
→ 槍ヶ岳山荘12:30 → 南岳小屋15:00

ひと登りすると天狗の腰掛(P8)が見えてきた。
少し早いが、3人が寝られるスペースがあったので
今日はここで幕営する。
稜線には、この後も、テント地がところどころにあった。

連日の長雨が嘘のようにすっきり快晴。
朝日を浴びた天狗の腰掛(右)と、左奥がP9らしい。

天狗の腰掛(P8)の山頂。テントが張れそうだ。
バックは左から三俣蓮華、鷲羽岳、水晶岳か。

P8から独標を見る。
右のラクダのコブのような岩峰がP9。

P9への登り。左は独標(P10)。

P9から独標の基部を見る。
写真に写っているザレ場を下る踏み跡があったが、
これは間違い。

独標の基部に着く。
多くの岳人が冬季にこの壁を登ったのであろうと
想像しながら、眺めていた。
が、当然、私達老人組は、通常ルートの右を巻く。

基部には緑色の固定ロープが張られている。
ここを千丈沢側にトラバースしていく。

基部からトラバースルートを見る。

独標トラバース道の中間付近に、よく紹介されてい
るオーバーハングを屈んで通る所がある。
写真では難しそうに見えるが、人が通れる幅も十
分にあるし、下にも足場があるので屈まずに通られ
る。

オーバーハングの岩場を回り込むと、岩棚をトラバ
ースするところがある。

岩棚の所を通ると、今度は斜上する。
見えている稜線の右の窪んだ所に、これもよく紹
介されているチムニーがある。

スリングの掛った3mくらいのチムニー。
想像していたようなことはなく、簡単に登れた。

チムニーを上から見下ろす。

チムニーを登ったところから上を見る。独標稜線へ
のルートは、ここをまっすぐ登るらしい。
写真で見るより傾斜は緩やかで、四つん這いにな
るようなことはなく普通に登れそうだ。

私達は、チムニーを登った所を、そのままトラバー
スしていく。
20mも行くと、突然、一番目の「スリングの掛った
下の見えない岩場」になる。
下が見えないので、下りられるのだろうかという
恐怖心が湧くが、2〜3歩、下の見えるところまで
下ると、3mくらいのホールドもスタンスもしっかり
ある岩場なので、簡単に下りられる。
よくヤバイ所として紹介されている3箇所のチムニ
ーとかP14の白くて脆い岩場などは想像していた
よりも簡単に登れたが、この後も、2箇所出てくる
「スリングの掛った下の見えない岩場」はあまり
想定していなかったので、一番ドッキリとした。

下の見えない岩場から前方のトラバースルートを見る。
写真では斜面が急に見えるが、普通に歩ける。

さらに、トラバース道を進む。

トラバースルートから前方を見る。
大槍の左が、穴あき岩のあるピーク、その左が
P11で、ルートは穴あき岩のあるピークとP11の
鞍部を下る。

間もなく、このトラバース道に、2番目の「スリングの
掛った下の見えない岩場」が出てくる。
下が見えないので怖いが、前回と同様に、2〜3歩
下の見えるところまで下ると、3mくらいのホールド
もスタンスもしっかりある岩場なので、割合簡単に下
りられる。
この写真は下から見たところ。
念のために、長目のスリングを用意し、打ってある
ハーケンに通して利用し、下りてから回収するのも
よいかもしれない。

トラバース道を振り返る。
チムニーを上がった所(中央やや左にある斜めの
平たい岩場)や、1番目の「スリングの掛った下の
見えない岩場」(平たい岩場の先にある黒い筋の
所)が確認できる。

トラバース道の上を振り返る。
中央が独標からの岩の出っ張りで、この稜線を下
ってきて、独標の次の小ピークは登れないらしいの
で、写真のガレ場を下り巻いてこちらのトラバース
道に合流するのだろう。

稜線に向かって登っていく。

2番目の「スリングの掛った下の見えない岩場」を
振り返る。
陽の当っている2つの岩峰の間の下りが、その岩
場だ。

独標の次の小ピークを抜けたあたりの稜線に登
り着く。

北鎌尾根がくっきりと現れた。
写真の中段付近に写っているP11(稜線から続
く左の岩峰)と穴あき岩のある岩峰(P11の右の
岩峰)が近い。

P11への登り。

P11からは、穴あき岩のある岩峰との間のザレ
場を千丈沢側に下る。

前方の小ピークは、千丈沢側(右側)を巻く。
小ピークの陰で、少し見えているのがP12か。

P11(右の岩峰)を振り返る。
穴あき岩のある岩峰(左の小さく穴の開いている
のが確認できるだろうか。)との間のザレ場を下
ってきた。

P12の下りから稜線に同化して分かりにくいが、
大砲岩(中央上部の黒い点)のあるP13が見える。

大砲岩(中央上部の黒い岩)のあるP13が次
第に近づいてきた。

左上方に突き出た大砲岩のあるP13へは、普通に
歩ける稜線を行く。

P13の山頂で、独標で幕営したという女性を含む
4人パーティに出合う。

P13から、P14、P15、大槍へと続く北鎌尾根を眺める。

P13から千丈沢側へ、この岩の間を下る。

P13の下りからP14を見る。
P14は、三段になっているように見える。

P14にさらに近づく。
白くて脆い岩肌が迫ってきた。

下降してトラバースした後、P14へのコルへ向かう。
私達は、コルから見えているクラックを登ったが、4
人組はコルからこの斜面をトラバースしていた。
(行けたどうかは未確認。)

コルから白くて脆い一段目のクラックを見上げる。
下から見上げると高度感がある。
他のHPを見てヤバイ所と思っていたが、長雨の後
だったせいか、意外にもホールド・スタンスともしっ
かりとしていて、簡単に登れた。
写真では左側を登攀中だが、私はクラックを登った
後も、まっすぐ右側を登った。

P14の1段目を登った所から、2段目の登りを見上げる。
左側のハイマツに掴まりながらでも、登れそうだった
が、ここは千丈沢側を小さく巻く。

P14の2段目を巻いたところ。
前方に見えるP14の3段目は直登せず、ここからP15
の先まで、千丈沢側を大きく巻いていく。
稜線をいくルートもあるようだ。

P14の2段目をトラバースルートからP14の3段目を
見上げる。

P14の3段目を巻くトラバースルートを見る。

少し進んだところ。
正面に見える大岩を回り込んだところに、3番目の「スリ
ップの掛った下の見えない岩場」がある。

3番目の「スリングの掛った下の見えない岩場」。
古いハーケンにスリングが掛っている。

下から見るとこんな感じ。
2〜3歩、下が見える所まで下ると、3mくらいのホール
ドもスタンスも割合しっかりした岩場で、写真で見るほど
のことはない。

右の大岩の下までトラバースしていく。

先の見えるところで、だいたいの行き先を見定めてから
あとは歩けそうな所を選んでトラバースしていく。
ガスると、行き先が見えないので、ルートファンディング
が難しくなるだろう。

オーバーハングした大岩を回り込むと、眼前に大槍が
迫ってくる。
P14の3段目の基部からアップダウンを繰り返し、徐々
に高度を上げてきたが、ここから、稜線に向かって一
気にガレ場を登って行く。

P15を過ぎた北鎌平を見上げる稜線に着いた。

ここからは、稜線を登らず、土砂斜面をいったん千丈
沢側に下り北鎌平を巻いて行く。

巻いて行くと、岩陰から大槍がいよいよ眼前に迫ってくる。
この岩を回り込んでから、稜線に向かって登っていく。

稜線まで登ると、稜線の少し下に北鎌平(左の平らな所)が見える。
右のピークは、巻いたP15である。

大槍と小槍が美しい。

風雪のなか加藤文太郎等を拒んだという大槍が屹立
する。
そういえば、親父が、「氷ノ山に登っていたら、雪の中
から、おお寒むと言って加藤文太郎が出てきた。」と話
していたっけ。

ルートは、稜線伝いに登り、左の稜線からカニのハサミ
のように小さく2本突き出ているカニ岩の横を通って登
っていく。

稜線をまっすぐ登っていく。
稜線の一番上あたりに一番目と二番目のチムニーがある。

天上沢側に少し回り込み、カニ岩の側を通って、まっ
すぐに登っていく。

よく紹介されている一番目のチムニーに着く。
北鎌平の基部で出合った単独行者が登っている。
ここはすぐ右を巻くと簡単にチムニーの上に出られた。

これも有名な二番目のチムニーに着く。
リックがじゃまをしてチムニーの中に入れないので、右
の岩を登る。
最初の2mくらいは足場は少ないが、ホールドがしっか
りあるので、腕に力を入れて登ると、後は普通の岩場。

二番目のチムニーを登ると左に50cmくらいの四角い
白ペンキの剥げた杭が見える。

杭の所から直ぐ上の山頂を見上げる。

登ってきた稜線。
一年間、楽しみにしてきたのに、もう終わってしまった。
名残を惜しみつつ、ここで小休止。

山頂には、12時に着く。
槍ヶ岳山荘まで下り、3人で握手。
槍にはガスがかかりはじめた。

この後、みんなと別れ、西穂へ下るつもりで、穂高岳山荘まで来ると、明日は昼前から雨と聞き、
一目散に逃げ帰った。
(この間の記録は、昨年のHP「北アルプス縦走 親不知からの15日間」にあるので割愛。)

田舎の「山の会」に居た親父に、冥土で出合ったら、ウン万円のガイド料を支払い連れて行って
もらったことは、けっして言わずに、話してやろうと思う。

                                                                 

稜線側を見る。

大岩の下を行く。
トラバースルートの一つのチェックポイントになる。

稜線が近づいてきた。

北鎌平を巻いているところ。

岩のゴロゴロした斜面を登る。

写真は、3次元のものを平面に写すため、どうしても傾斜が急に見えたり、人物など比較するものがないと過大な印象を与える。
おおざっぱに言えば、実際は写真の3割減くらいに見てもらえばいいのではないか。
 表現は、私の主観で書いておりますので、参考としてください。
 P14からP15までの千丈沢側のトラバース道は、風化が進み、年々踏み跡が狭くなってきているとのことであった。 
 また、毎回ルート(の細部?)が違うとも言われていたので、ルートファンディングも難しくなってきているのであろう。

一番目のチムニーを迂回したところから上を見る。
上に見えている大岩を左から回り込むと二番目のチム
ニーがある。

(注) 赤線がルート、□が小屋及びテントでの宿泊地を示す。

(注) P8〜P15は、他のHPを参考として図示したもので、このHPを見るための記号と考えてください。

大岩が近づいてきた。

ガレ場の登り。

トラバースルートからP14の3段目を見上げる。

「この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平20業使、第350号)」

「この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平20業使、第350号)」

左上あたりに一番目のチムニーがある。

日本アルプス等一覧表

日本百名山一覧表

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